2020年6月
私たちはwith & afterコロナの時代も視野に入れた労働と社会課題に積極的に取り組むことによってもっともっと住みやすく、働きやすい国にしたいと強く願っています。そのためにも学術界、産業界、教育界が一致結束をして英知を出し合い、学術の推進と社会課題の解決をめざすために、新しいネットワーク(学会)が必要を考え、日本労働科学学会を設立することになりました。
「労働科学」は100年前に、紡績工場の中で誕生しました。大原孫三郎倉敷紡績株式会社社長の元に結集した若き学徒4人によって女性労働者を対象とした夜勤・交代勤務の労働負担研究、工場内の温熱や粉じん環境の測定、評価と改善の調査研究、集団給食のあり方などと取り組み、工場経営と労務管理の近代化に大きな成果をあげました。
こうしたユニークで社会に役立つ「労働科学」の実践的な活動はたちまちのうちに工場の壁を乗り越え、産業界へ、そして多地域へ拡がるとともに、学術的なネットワークをつくりながら、政策にも貢献しました。まさに変革の科学としての「労働科学」の面目躍如たるものがありました。
翻って現在、わが国は人口減少フェーズに突入し、少子高齢の大波に直面する中、産業構造、就労構造の激変が現実になっている今こそ、私たちは、変革の科学たる「労働科学」の出番と心得ています。経済動向、技術動向、そして社会の価値観が大きく変わろうとしている今、働く人たちの安全・健康確保をベースとしながらも「働き方・休み方」と暮らし方についての調査研究を進め、学術交流による成果発表とともに、多角的な視点からの情報発信や提言等を取りまとめ、発信することをめざします。
日本労働科学学会では学術研究の推進を活動の基盤としますが、産業界との交流・協働をはじめ、人材育成のための事業やセミナー等、現場ニーズに即した活動を重視します。
私たちはいよいよ社会へ産声は発します。会員諸氏の積極的な参加を得て、私たちの存在価値をアピールしようではありませんか。頑張りましょう。